キーワード「熱帯魚」

熱帯魚屋さん*1には熱帯に住む魚だけではなくて、温帯〜寒帯に住む「チョウザメ」や日本産淡水魚の「タナゴ」、中国原産の「アカヒレ」なども売られている。
温帯や寒帯に住む魚であっても熱帯魚と区別がつかないほど色鮮やかな色彩のものも多いから、魚を飼うのが趣味でない一般の人が見てああ熱帯魚はきれいだねということはよくある話だ。
これは明らかな誤用であるのだが、魚を飼うのが趣味の人がこういう言葉を耳にしても気色ばんでとがめたりすることは少ない。


なぜなら、まず第一にこの会話の中で重要なのは「きれいだね」の部分であって、観賞魚を観賞・愛玩する時に魚の産地などはあまり関係のない話だからである。
それは誤用だと怒ってしまっては会話が続かないので、「ああこの魚は水温が低くても大丈夫だからヒーターなしでも飼えるんですよ」などと軽く説明するのがいいのだ。
「きれいだね」にしても相手の人はお愛想で言ってくれているだけかもしれないので*2、オトナの趣味の人なら誤用をとがめたり、ものすごく詳しく説明したりはしない。
そんなことをしてもマニアと思われるだけ損なのだ*3
だが、実際に魚を飼う時には水温はとても重要な問題なので、熱帯魚とそれ以外の区別はしっかりしなければいけない。*4
辞書的に言葉を説明する時にも重要だ。
チョウザメは熱帯魚だという人が仮に多数いた(ありえないが)としてもそれは誤用であるから辞書的には区別する必要がある。


第二の理由としては、熱帯魚以外の魚類を飼育する趣味について、一般的な言葉が見あたらないことがある。*5
マニア同士の会話であれば「日淡(日本産淡水魚)やってます」などと細分化して言うことがあるが、一般的な言葉で熱帯魚以外の魚類飼育趣味を区別して表す言葉はないといっていい。
言葉がない理由はチョウザメなどを飼っている人が少なく特殊なことと、前述の理由で(一般的な人にとっては)そこまで細分化する必要がないせいだと思う。*6


なお、熱帯魚やそれ以外の魚類、水棲生物や水草を育て観賞・愛玩する趣味のことをひっくるめてアクアリウム趣味などということがある。
アクアリウム」は水族館や水棲生物を飼育して楽しむ水槽のこと、「アクアリスト」はそれを楽しむ人のことであるが、これらも認知されているとはいえ「熱帯魚」ほど一般的ではないから、一般の人が観賞魚水槽をみて熱帯魚と言ってしまうのも無理からぬこととは思う。

*1:最近はアクアショップと呼ぶことも多い

*2:いやむしろ、お愛想だと思っておいた方が無難だ

*3:あの人に魚の話題を振るとあとが大変だなどと思われかねない

*4:厳密には熱帯地方でも高地に住む魚は低温が必要だったりする。単に言葉が重要なのではなく、原産地の環境を知ることが重要ということ

*5:金魚・錦鯉は別、これらは歴史もあるし、趣味人口も多い。元々屋外の池などで楽しむものでもあるから分けて考える

*6:寒帯魚」などの言葉がないのも同じ理由だと思う。